日々の鍛練

いよいよお祭が近づくと祭人は「あぁ、今年の祭ももう終わりだな…」と感じるそうです。一年かけて準備してきたお祭の当日はグランドフィナーレというわけで「全て」ではないようです。当日だけのイベントではなくて一年を通じて根底にあるものなんですね。

9月中旬、岸和田の試験曳きを観に行った帰りに泉大津に寄ると、去年は遠くに聞こえていた走り込み(?)の掛け声が今年は近くで聞こえてこちらにどんどん迫ってくる…と目の前を若い男子女子がなかなかのスピードで暗闇の中を通過して行きました。これは後を追うしかない!

tannren.jpg夜の練習風景を見せてもらいに行きました。
祭当日に勢いよく走るだんじりを見て私は不覚にもだんじりそれ自体のテクノロジーの進歩に目を奪われて、大きな企業や大きな自治体の大きな資本で動く都市のイベントのような妙なスムーズさを感じてしまいムズムズしていたところがあったのですが、そのムズムズがもしかしたら間違いだったと恥ずかしくなりました。そう言えば、以前祭人が「テクノロジーと人が融合してはじめてだんじりが動くんだ」と言っていた意味がやっとわかりました。この奥行きの深い素晴らしい彫り物の下にあるハイテクノロジーな足回り。単体でも素晴らしいんだけれどこれだけでは完結しないだんじりの曳き手の心意気と鍛練の様を目の当たりにして、祭当日に心を打たれるわけを紐解かれたような気持ちになりました。

※写真は平日の夜の境内でそれぞれの担当セクションを練習する様子。平日の夜にこれだけ多くの若者が毎日集まって祭の準備をしている。
地面に突刺した太い柱の周りを回る人たち、菩提樹に繋がれた綱を持って練習する人たち、屋根に上がる人、鳴り物の練習をしている人…。

村のお嫁さん

ohirugohan.jpg泉大津に来て思うことの一つが女性が女性らしく男性が男性らしいということ。そしてそれぞれの役割がはっきりしているように思います。男性からも女性からも力強さや堂々とした印象を受けます。またそういった家族で構成されているマチに奥深さを感じるのです…。

宮入前のお昼ご飯、女性たちは朝から唐揚げ揚げっぱなしで男性陣が帰ってくるのに備えていました。それは想像に難くないのですが、お昼ご飯のテーブルが男女でわかれていたのには少し驚きました。

ご飯を終えて私たちも宮入りを観に自転車で神社へ向います。お昼を準備していた奥さんは自転車に乗りながら道行く人達みんなに挨拶したり簡単な会話を交わしたり。「みんな知合いなんですね」と私が言うと「う〜ん…私たちは村のお嫁さんだからね〜」と。彼女たち奥さん方から受ける力強さの源はこういうことなんですね。

穴師神社

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初めて穴師神社に行きました。
写真は池浦の宮入の様子。
こんなに賑やかなのに静寂さを感じるのは何だろう…。
心が鎮まる感じは何だろう…。


大津神社 宮入

miyairi-3.jpg2日目午前中に大津神社で濱八町の宮入りが行われました。
大津神社の前に八町のだんじりが並びます。

大津神社と穴師神社は泉大津の駅をはさんで海側と山側に位置していて自転車で10分程の距離にあります。そんなに近いところにそれぞれ八町と四町が神社に属し全ての町がだんじりを持っています。持っているということはそれを曳く人がそれだけいるということであって運営する人たちがいるということです。
建築屋さんなら想像がつくと思いますが、いや多分その想像を超えるほどに労力と費用がかかるだんじりを一町で持ち運営しているということ、この組織力には驚かされます。

miyairi-a.JPG※一町の規模がどのくらいかといいますと…大阪市内で言えば通りごとに町名がついているその一町毎でしょうか…。泉大津市全体でも東西南北におよそ5.5q人口78,010人(泉大津市ホームページ参照)ということで、わかりやすいところで比較すると面積は大阪市内の本町を中心として北は梅田、南は難波を半径とする円に収まる規模であって、人口は甲子園球場の観客席の約1.5倍です。




田中町青年団

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前厄・厄年の人達が厄餅と呼ばれる紅白のお餅を屋根からまいています。

田中町

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 宮入

miyairi-1.jpg宴会???!!!神社の前にだんじりが到着するやいなや円形劇場のできあがり。何やら色んな芸が繰り広げられていました…。曳いている時は皆それぞれの役回りに徹していて真剣で忙しそうですが、この時ばかりははじけていました。

コマ替え

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一日目、夜の曳行が終わってだんじりが小屋に戻ると明日に備えてコマ替えの作業が始まります。

個人的に今年最も楽しみにしていた作業の見学です。

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コマ係の人達が一年中コマが割れないように水につけたり出したりして調整しているそうです。その日の気候・天候に合った調整が求められるシビアな仕事です。曳行中の安全にもかかわりますしスムーズに走れるかどうかもコマの調子で変わってきます。祭当日、どんな含水率でいくか数ヶ月前から作業が始まっているそうです。
コマが水を多く含んでいれば重くなる、乾いていれば軽くなる。含水率によってだんじりの走り方も変わります。日々の仕事で木を扱っているわけではないのに皆さん木の特性をよくご存じです。
こういった作業、近隣の仲間で家を建てる「結」を思い起こさせます。

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だんじりの下にもぐってブレーキを調整しているところ

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作業が終わり片づけをしてミーティングが始まりました。一日目はこれで終了です。
作業の様子を見ているとそれぞれの担当箇所をこなしているばかりでなくお掃除だとかその周辺のことを誰かがいつの間にかやっていて一連の作業がすごくまとまっているんですよね…こういったチームのあり方って日本的ですよね。見習いたいです。
※小屋の扉がかっこいい。

祭の風景

seinendan.jpgだんじりの前を行く元気な若者たち。

幾つもの世代が一つのことをともに行う姿が凝縮されているこの風景に私は魅了されているのかもしれないなと思います。

撮影場所は曳行コースの中で最も気に入っている箇所。町のしずかな佇まいを感じます。かちあいが終わった後しばらくしてたどり着く場所なので神社の周りとは少し違った表情を見ることができます。

             上之町

素材と技の島

私にとって魅力的なものの多くが淡路島発だというのに、この日が初めての淡路島上陸とは少し不思議な気がします。これまでは機が熟していなかったのだと思うのでやっとこの日が来たといった感じです。到着後しばらくすると早くも頭の中を色々なものがぐるぐると廻ってきて興奮冷めやらず。しかしそこはグッと我慢。今年の目標のひとつ、少しずつ丁寧に物事に向かい合っていこう、を実践しなくてはと言い聞かせながら冷静を保とうと努めます…。

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と言うのも、この日は北は北海道南は大分から志高き左官青年団が淡路島の師匠を訪ねて漆喰の勉強会をするということで、私も同行させていただくことになったのです。


その道のスペシャリストが集っての実践的で具体的な勉強会。志を一つにする職人さん達の意見交換や語らいを傍らで伺うことができる大変貴重な機会でした。
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見学をさせていただいた住宅の前に建つ立派な牛舎。
この鳥衾、淡路島特有のものでしょうか。
だんじりの鳥衾と同じ形状に見えます。見たことがあるような…。要確認です。
こんな風に見ていくと日本の歴史、アジアの歴史、物作りの歴史…自然の恵と職人の技とそれがどのように伝承されて発展していったのか、ある土地で育まれた技はどんなルートでどこに伝わったのか、知りたくなります。はたまた、それがなぜ現代で私たちの日常から遠ざかって行ったのか。そこにもし間違いがあったとするならば今私たちができることは何なのか。淡路島に来てそんなことを考えていました。

…つづく…

知っているような

帰国した頃に戸惑ったことの一つが、情報が多すぎる、ということ。「情報」が騒がしいのです。
常に新しいことが目に耳に入ってきて、自分が何を知っているのか知らないのか、何を知りたいのか、判断がつきにくい飽和状態になりました。おまけになんとなく何でも知っているような気持がどこかにあるという、厄介な症状が現れました。
滞在していた場所が日本のように情報があふれている所ではなかったので、必要な情報は自分でとりに行かないと出会えないのです。だから知らないこと知りたいことを明確にしている必要がありました。帰国時のその問題は、日本語だと流し読みだとかナガラ聴きをしているだけで情報の上面をさらうことができたことも知ってるつもりになる一つの原因だったのでしょう。いつでも情報が周りにあるという安心感もあったかもしれません。

単語を知っているだけでその内容まで知っているような気になっていることって結構多いのではないでしょうか。「漆喰」。我らが同志で漆喰について知っている設計さんがどれだけいるかな(私も含む)…そんな事を思わざるを得ない淡路島での一日の始まりはじまり…。
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今私たちにできることは漆喰を知り提案することかなと。
漆喰が良いということは多くの人が知っているのに(最近ではお施主さんの方がよく知っているかも)採用されている現場が少ないのは、いつもお施主さんの近くにいる私たちがそれを実践していないことが一つの大きな原因であると考えます。「無知が恐れを生む」とは先日友人に言われた言葉ですが、深く漆喰を知らないがゆえに漆喰に手を出せない設計や施工の同志がたくさんいるはず。
couではこの一歩を踏み出そうと思います。